今から15年ほど前。法人営業担当を告げられた時、彼女は戸惑った。経営者と何を話せばいいか分からず、会話も続かない。訪問するのが怖かった。

　「お客さまに育ててもらって、今の自分がある」と振り返る。「そういう時は、こんな話題がいい」。信頼関係のつくり方を一から教えてもらった。上司や本部も手厚く支えた。「一人じゃない」。その安心感が、彼女を前に進ませた。

　銀行員として最も熱くなるのは「一番に相談したよ」と言ってもらえた時だ。明るい話題はもちろん、悩みや課題を打ち明けられた時は、苦しい胸の内を明かしてもらえる信頼と寄せられた期待に、強い使命感を抱く。「何とかしたい」。本部の渉外担当とも連携しながら、お客さまの課題解決に向け奔走する。

　今年４月から、支店長となった。目指すのは「優しいチーム」だ。私も周囲に支えられてきた。失敗を恐れず挑戦してほしい、困ったことがあったら一緒に考えよう。そう笑う彼女の周りには人が集まる。新しいリーダーは悩みながらも、しなやかに次の一歩を踏み出す。