自宅のリフォームを、目を輝かせて見つめていた少女。その原風景から、彼女は建築の世界を志した。設計士に憧れて、まず飛び込んだのは施工管理の現場。新築住宅の担当として５年間、職人たちと汗を流しながら、夢をかなえるための準備を始めた。

　働きながら、一級建築士の資格取得に挑む。平日は就業後に夜10 時まで、日曜は一日中、学校に通い勉強に没頭する。だが、学科試験で二度、製図試験で一度不合格となり、心は折れかけた。それでも彼女を支えたのは、「ここで諦めるな」と応援してくれる家族と会社の仲間たち。その思いに応えたい一心で、挑戦４年目に資格をつかみ取った。

　難関資格を手にしても、彼女はおごらない。現場に立てば、指示を出す相手は経験豊富な職人ばかり。「分からないことは素直に聞く」。その謙虚な姿勢が、彼女の成長を支える土台となっている。

　いつか設計部門で働く日を想像する。目指すのは、見た目の美しさと使いやすさを両立した設計。現場の知識を力に変え、誰もが目を引く建物を生み出したいと願う。描く線はきっと、支えてくれた人々への何よりの恩返しとなるはずだ。彼女の本当の挑戦は、ここから始まる。