いろんなことに、
挑戦させてもらっています

加茂水族館（鶴岡市）内に構えるレストラン「魚匠ダイニング 沖(おき)海月(みづき)」で研さんを積みながら、日本料理の技術を磨く若き女性料理人がいます。昨年は山形県代表として第57回技能五輪全国大会に出場し、現在は１児の母でもある髙山未緒さん。日本料理を志したきっかけや、日々の仕事のやりがい、今後の目標について聞きました。

―どんな子どもだった？

　男子と一緒にサッカーやかけっこをしていることが多い活発な子どもでしたが、同時にお菓子作りも大好きでした。母に手伝ってもらいながら作ったクッキーから始まり、ロールケーキやシュークリームなど、たくさん作りました。特にお菓子をデコレーションするのが楽しかったですし、友達や家族に喜んでもらえるのもうれしかったです。将来の夢はもちろんお菓子屋さんで、調理科のある高校に進学しました。

師匠との出会い

―なぜ日本料理に？

　高校では、1年次に西洋料理、2年次に中華料理、3 年次に日本料理を勉強するカリキュラムでした。もともと、飾り切りなどの細かい作業が好きでしたが、日本料理の盛り付けの美しさに徐々に引かれていきました。また、季節の食材を使用し、素材の味を生かした日本料理の調理法も魅力的でしたね。その日本料理の授業を担当していた先生が、「魚匠ダイニング沖海月」の料理長・須田剛史さん。須田料理長が授業中に「卒業したらうちの店で働きたい人はいないか？」とクラスのみんなに聞いたことがあって、思い切って授業後に「働きたいです！」と話しに行きました。子どもの頃からの夢だったお菓子屋さんへの就職も考えていたのですが、勢いのままに立候補してしまうくらいに日本料理が楽しかったんです。

　入社後は「料理人の世界は、やっぱり皿洗いとかから始まるのかな」と思っていましたが、そんなことはなくて、入社して１週間ほどで魚に触らせてもらいました。初めは、まかない用の食事で練習を重ね、2カ月後には、お客さまに出すメニューも調理させてもらえるように。県外に就職した同級生らと比べると、現場に出るのは早かったですし、いろんなことに挑戦させてもらっていると思います。

苦い経験

―高校生の頃から、技能五輪が目標だったそうですね。

　技能五輪について知ったのは、須田料理長の授業で、大会の課題に挑戦したことがきっかけでした。授業で教えてもらうまで、日本料理の技術を競う全国大会があるなんて知りませんでしたが、「私たちと同じ高校の先輩が入賞した」とか、「時間内に決められた手順で正確に料理を作る」とか、「出場者は毎日職場で練習していた」など須田料理長から技能五輪の話をたくさんお聞きして、いずれは私も出場したいと思うようになりました。

　昨年９月に行われた技能五輪の練習のために、お店で「鯛(たい)の姿造り定食」を食数限定で提供させていただきました。カウンターに料理をお出しした瞬間に、お客さまから歓声が上がったことがとてもうれしかったです。料理長がお客さまに技能五輪の話をしてくださり、たくさんの方に応援していただきました。周囲のサポートを受けて、毎日練習を重ねて県予選を1位で通過し、念願の全国大会出場。でも当日は、大勢の人たちに見られる中でとても緊張し、一番自信があった第一課題の姿造りで指を切ってしまいました。その後は、なんとか持ち直しましたが、入賞はできず悔しかったです。

再びあの舞台へ

―今後の目標は？  

　まずはフグの調理資格を取得することです。いろいろな魚をさばけるようになりたいですね。そして今はまた、技能五輪に出場したいと思っています。練習や経験を通して、以前は苦手だった人前での調理が苦ではなくなってきました。少しずつ、成長を感じています。昨年の大会直後は落ち込みましたが、その経験も糧に、年齢制限の23歳まで、挑戦していきたいですね。そして、いずれは私のように技能五輪を目標にする後輩がたくさん出てきて、日本料理が盛り上がっていけばうれしいです。

撮影 / 菊地 翼