やまがた未来プロジェクト2024

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2020.09.16

Next generationvol.3

#03 髙橋孝行 株式会社トップアートセクション 取締役企画営業部長

どれだけ人のために動けるか、
だと思います

 飲食店を中心に次々とおしゃれな店をオープンさせ、その成功例や紹介で次のオファーが引きも切らない。看板・内外装を扱う会社の営業マンでありながら、経営計画作成から土地探し、店舗デザインまでこなし、年間500〜600件の仕事を受注するスーパーサラリーマン、それが髙橋孝行さん(41)。依頼主のため、街の活性化のため走り回る、その原動力について聞きました。

―21歳が人生の転機だったとか?

 そうです。独立しようと仕事を辞めたら、彼女の妊娠が分かりまして。結婚するためやはり就職しようとハローワークに駆け込み、出会ったのが今の会社です。前職の経験を生かせそうなのはここぐらい。もう後がない。頭を下げ、拾ってもらったような形でした。

育ててもらった

―初めはどんな仕事を?

 看板・内装工事の施工や現場管理です。結構、むちゃくちゃな現場を、血を吐くような思いでやりましたね。最初は現場管理なんて経験がない。誰も教えてくれない。職人さんはあきれて帰っちゃう。何も分からない自分に何ができるか考え、朝早く現場入りし、掃除することから始めました。現場を整え、職人さんの好きな飲み物をそろえておく。これを続けていたら少しずつ、話を聞いてもらえるようになりました。人って、心を揺さぶられると納得し、協力してくれる。学んだことは大きく、職人さんとの絆も生まれました。

 30歳で営業部へ異動になりましたが、ここでも他の会社の社長さんに育ててもらったようなものです。パソコンも使えなかった自分にできたのは「素直に」「すぐやる」ことぐらい。例えば見積書の数字を一桁間違って、めちゃめちゃ怒られる。でもすぐ謝り、すぐに直した書類を持って行く。すると不思議とその後、かわいがってもらったりしました。

内装は残った費用で

―今はお店のプロデュースまで手掛け、飲食店を始めたい人から相談が絶えないとか。そうなるきっかけは何だったんでしょう。

 山形の飲食店って、食材も良い、人も良い。でもマーケティングやブランディングがあまりできていません。「東京のコンサル」という人のやり方を見て、疑問に思うことも多かった。だから、工事の前にここを一生懸命やれば、お客さんに喜ばれるし、他社との差別化につながると思ったんです。

 内外装に限らず事業計画の策定から場所探し、備品の調達、メニュー作り、看板作りなど開業のプロセス全てに関わっています。それを可能にするのはこれまで築いた人とのつながりです。

 内装については資金から必要な経費を引き、残った予算でプランニングするようにしています。お金がなくても「店をやりたい」という意欲を応援したいし、オープンしたからには繁盛してほしいですから。成功例を積み重ねて、街の活性化にもつなげていきたいんです。

2時間前に出社

―本業の内装以外にも、何でもこなしちゃうんですね。そんな髙橋さん流の仕事術とは?

 何事も断らない、イエスマンであること。するといろんな相談が持ち込まれ、自分の幅も広がっていきます。今、年間500〜600件ほどの仕事を頂いていますが、売り上げはもとより件数を重視していますね。それはどれだけ人と会ったかという証明でもあるから。また新人の時から変わらず、2時間前出社を10年以上続けています。朝仕事は能率が上がるし、何より毎日こつこつ頑張ることって、一番の武器になると思うんです。

 そういう仕事への姿勢は、当社の社長から教わりました。うちの会社で一番働いているのは、間違いなく社長です。休日のイベント撤収や早朝の飲食店の油掃除などを率先してやるような人。部下に仕事を教える時間もないけれど、「自由にやれ、責任は取る」というスタンス。そのおかげで今の自分がありますし、社長のため頑張ろうと思えます。

やりがいで選ぼう

―これから社会に出る後輩たちにアドバイスを。

 建築を学んだわけでもない、才能もないセンスもない。そんな自分ですが、日々仕事の依頼があるのは人に恵まれ、その人のため一生懸命応えようとしてきたから。人間って、与えられた時間は平等です。大切なのは、その中でどれだけ、目の前のことに全力を尽くせるか、人のために働けるかだと思います。そういう意味で、仕事はやりがいを重視して選ぶことを勧めています。休みや給料も大事だけど、それだけを求めていると、かなわない時に不満しか残りません。

 仕事っていいな、山形っていいな。若い人にそう思ってもらいたい。そう思ってもらえるような仕事を、これからもしていきたいです。

撮影 / 菊地 翼

髙橋孝行 TAKAHASHI TAKAYUKI
株式会社トップアートセクション
取締役企画営業部長

1979年、千葉県生まれ。長井市で育ち、長井工業高校卒業後、山形市内の内装工事会社を経てトップアートセクション(山形市)に入社。内装工事・現場管理の業務で、特に当時のセブンプラザ(同市)を任され経験を積む。30歳で営業・プランナーに。開業前から開業後までクライアントに寄り添う姿勢が評判を呼び、県内外で数多くの店舗を手掛けている。今年3月には、新型コロナウイルスで苦境に立つ飲食店のため、テークアウト情報の取りまとめにいち早く動いた。2019年より現在の役職。山形市内で妻、1男1女と4人暮らし。

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