やまがた未来プロジェクト2026

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2026.02.18

vol.30特集

#にぎわいが好き 「ない」なら、沸かせ。

2025年11月。静かな東根温泉街に、県内外から約1万人もの老若男女が詰めかけた。「湯けむりと珈琲フェス」。
新しい「山形の遊び場」が生まれた瞬間だった。仕掛け人は、脱サラして起業、そしてイベントを起こすため移住した29歳の若きリーダー。「ないなら、作ればいい」。そのシンプルな衝動を、どうやって巨大なムーブメントに変えたのか?実行委員長の大﨑雄哉さんに「たくらみ」の裏側を聞いた。

東根温泉を舞台に昨年「湯けむりと珈琲フェス」を初開催した大﨑雄哉さん。「C&Cひがしね」のスタッフとして創業相談も受けている

東根温泉に1万人を呼んだ仕掛け人・大﨑雄哉の「熱」の広げ方

 ‐東根温泉に1万人。正直、これだけの反響は予想していましたか?

 いえ、想像以上でした。終わって1~2週間は燃え尽きて「抜け殻」になっていたくらいです(笑)。でも、会場でたくさんの「楽しかった」「やってよかった」という声を聞けて、何よりの励みになりました。

 ‐そもそも、なぜこのフェスを?

 きっかけは、大学時代の友人に「C&Cひがしね」というコワーキングスペースを紹介してもらったことでした。そこで山形大学の小野浩幸先生から「東根温泉の活性化」について相談を受けたんです。そこで「温泉と珈琲」のアイデアをまとめC&Cひがしねのビジネスプランコンテストに出場したのですが、結果は入賞にかすりもせず。それがめちゃくちゃ悔しくて「なんとしてもこのアイデアを実現したい」と火が付いたのがスタートです。その後仙台から東根へ移住を決めました。

 ‐「悔しさ」も原動力の一つだったんですね。でも、よそ者の若者が歴史ある温泉街に入り込むのは大変だったのでは?

 最初はやっぱり「君、誰?」という反応でしたよ(笑)。でも足を運んで話すうちに「このままじゃ温泉街が寂れてしまう」という課題感は一緒だと分かったんです。僕ら若者の「やりたい」という熱に、応えてくれる大人の方がたくさんいたことが幸運の一つでした。最終的には、温泉街の方々も一緒になって盛り上げてくれました。

 ‐なぜテーマが「コーヒー」だったのですか?

 コーヒーがあるところには人が集まるというか人を引き寄せるようなイメージを持っていて。コーヒーが好きな方はもちろんですが、東根は子育て世代も多く、妊婦さんや家族連れも楽しめるように「デカフェ(カフェインレス)」にも力を入れました。イベントをきっかけに「UTSUROI」というデカフェブランドも立ち上げたり。温泉に漬かった後にはコーヒーを飲んで一息つく。そんな「コーヒーの街」として少しずつ認知されるようになっていけば、そこから農業や観光へも波及効果が生まれると考えています。

 ‐たった一人で始めた企画が、どうやって多くの人たちを巻き込んだのですか?

 SNSで「こういうことやりたい!」という思いを動画で丁寧に発信し続けたら、それを見た学生や社会人から「イベントに協力したい」とDMが届くようになったんです。うれしかったのは、学生たちが自走してくれたこと。高校生スタッフのまとめ役を高校生がやってくれたり、東根一中の生徒や先生が学校行事としてブース出展やPRをしてくれたり。僕が「やりたい」と旗を振ったら、それに共感してくれた人たちが集まってきてくれた感覚です。今回のイベントは多くの方の協力のおかげで開催できたので本当に感謝しています。

 ‐学生にそこまで任せるのは勇気がいりませんか?

 意識していたわけではなかったのですが、結果的に任せてよかった。最初は僕自身初めてのことばかりでバタバタと企画書も作り込めずに渡してしまうこともあって。すると、その埋まっていない部分を中学生たちが自ら埋め始めてくれた。チラシを自作したり、面白いアイデアを提案してくれたり。大人が細かく指示を出すよりも、委ねてしまうことで彼らの自主性に火が付いたと思っています。「余白」があるからこそ、参加する側も自分ごととして楽しめる。その発見は大きかったですね。

 ‐最後に、山形の学生へメッセージをお願いします。

 今回、1回目が成功したのは「移住者が頑張っている」というボーナス・ステージだったからだとも思っています。次は真価が問われる。だからこそ、仕組みを整えて再現性のあるイベントにしたい。僕のやり方が正解だとは思いません。でも、山形には「やりたい」と言えば、面白がってつないでくれる場所や大人が必ずいます。学生さんの力は地域に本当に必要とされています。一緒にこの街を「若い人が活躍できる場所」に変えていきましょう。

「湯けむりと珈琲フェス」のチラシ

誘導などで中高生が大活躍

地元の東根一中はブースを出展

大﨑雄哉さん

株式会社「縁と縁」代表取締役。1996年新潟県生まれ、山形大学卒。製薬会社を経て2023年に独立し、キッチンカー事業を開始。25年「湯けむりと珈琲フェス」開催のため東根市へ移住。㈱縁と縁を設立。フェスでは実行委員長を務め約1万人を動員した。C&Cひがしねプロデューサーも務める。

にぎわいを生む「三つのスパイス」

大﨑さんが語る成功のポイントは三つ。一つ目は「主催者の圧倒的な熱量」。「絶対にやる」という強い意志が人を動かします。二つ目は「学生がつながる場所」をつくること。そして三つ目は「余白」。参加者が「自分ならこうする」と入り込める隙間こそが、熱狂を生む鍵になります。

ぶっちゃけ、起業って食べていけるの?

学生が一番気になる「リアルなお金」の話。大﨑さんの場合、現在の収入の柱は3本。約60%は自身が経営する「キッチンカー事業(厚焼き卵サンドなど)」。残りは「C&Cひがしね」のプロデューサー業務、そしてSNS運用代行、営業代行などの業務委託です。収入源を複数持っておくことが、安定して挑戦し続けるためのこつだそうです。

大﨑さんのようにアイデアを形にしたいなら、まずは誰かに話すことから。
山形には学生の挑戦を応援するスポットがたくさんあります。一例をご紹介します。

C&Cひがしね(東根市)

今回のフェスが生まれた場所。コワーキングスペースがあり起業相談も可能。

スタートアップステーション・ジョージ山形

毎週定期的に創業相談を受け付け中。コワーキングスペースも。

やまがた若者交流ネットワークサイト「やまカツ!」

山形の若者の活動を応援する「若者サポーター」やイベント情報などを掲載。

一人で悩まず、まずは「熱」を持った大人に会いに行ってみよう。

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