やまがた未来プロジェクト2024

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2024.05.29

vol.23特集

果樹王国やまがた れぼりゅ~しょん

果樹王国やまがた れぼりゅ~しょん ぼくらの誇り山形のフルーツ挑戦するセンパイたち

山形の農業を盛り上げたい!覚悟を持って発信

やまのカタチ 代表取締役 天野昂汰さん(28)

 自身が登場し、農業の課題や農家の日々を自分の言葉で語る。「日本農業の大きな問題点」と打ち出した動画がバズり、再生数は248万回に。果樹農家としてサクランボとラ・フランス、桃を生産しながら、インスタグラムを中心にSNSで山形の農業について発信しているのは、東根市の天野昂汰さん。その原動力は「山形の農業を盛り上げたい」という一念だ。

 小さい時からおばあちゃんの畑を手伝い、農業がずっと身近にあった。サッカーに打ち込んだ高校時代を終え、地元で就職。農業関連のメーカーや卸業に身を置くうち、流通など農業を取り巻く「仕組み」へ疑問が募っていった。そこで仕事を辞め、1年間と決めてワンボックスカーで日本一周の旅へ。先進的な取り組みを実践している農家を訪ね歩き、手伝いをしながら話を聞きまくった。

 全国の「ぶっとんだ」農家の熱い思いに触れ、こみ上げてきたのは「自分で作物を育て、自分で伝えたい」という思い。山形に帰り、おばあちゃんの畑を継ぐ決心をした。2023シーズンは旅でできた全国の友人やSNSフォロワーの応援もあり、本格就農1年目にしてラ・フランス「直売のみで完売」という目標を達成。SNSとリアルのつながり、両方の強みとありがたさを実感している。

 自分が動画に出演し、語っているのは「こんな人も山形にいるんだ」と下の世代に感じてほしいから。山形にはまだ少ないという「ぶっとんだ」農家を目指しつつ、地に足着けて2年目のシーズンに向き合っている。

「やまのカタチ」のインスタグラム公式アカウント。発信ツールとして、また生産した果物を販売する入り口として、戦略的に活用しています

全国で知り合った友達が山形に来てくれて、畑を手伝ってくれたり、ホームページを作ってくれたり…。助けてもらってます

果物がない季節も山形のことを発信したいから、加工品の開発や生産にもチャレンジ。上はラ・フランスとリンゴで醸造したお酒「ハードサイダー」。製造・販売のための免許も苦労して取得しました!

庄内柿を守りたい 一つの答えがエナジーバーだった

人との出会いが重なって、たくさんの回り道を経て、エナジーバーが形になった

柿守人 1Blue取締役 Sukedachi Creative代表 佐久間麻都香さん(38)〈一番左〉

 麻都香さんを突き動かすのはいつも「勝手な使命感」なのだという。切られそうな柿畑を見て「私がやります」と手を挙げ、農業の担い手がいない現状を目の当たりにし「何とかしたい」と考える。庄内柿の生産者となり、産業として持続させるため新しい活用法を模索。一つの答えとしてエナジーバーという商品が完成した。

 学生時代、海外協力隊員としてアフリカのブルキナファソで米の生産指導に従事。海外で働く夢を抱きつつ、もっと農業知識を身に付けたいと考え鶴岡で農業研修生に。そこで〝たまたま〟出会った農家から庄内柿の畑を借り受けることになり、生産者への道を踏み出した。地元の食材を守り、発信したいという思いでアルバイトをしながら柿を育て、「柿守人」というチームで管理をしたり、新たな活用法として柿の葉茶の製造・販売にも取り組んだ。

 転機はオランダ出身のリップス・デイビッド・マイケルさんとの出会い。彼はアウトドアシーンで手軽に栄養が取れるエナジーバーを庄内の食材で作ろうと考えていた。柿の使い道として「これは面白い!」と直感した佐久間さん。勢いのまま試作、商品化を進め4カ月後にはマルシェで販売した。しかしその時点では材料に柿を使うミッションは未達成。水分量の調整など試行錯誤が続く。ユニークな干し柿づくりを実践する農家との出会いもあり、2年後にようやく庄内柿ベースのバーを完成させた。

 一方で生産者として自らが柿を作り続ける難しさに直面。去年春、借りた畑の柿の木を切ることにし、一つの区切りとした。「自分の柿畑では結果を残すことができなかった」と佐久間さん。でも干し柿を買い取り、エナジーバーとして世界に発信する道筋は見えてきた。収穫期などには仲間とともに農家の仕事を手伝う。エナジーバーの製造には留学生も関わっている。国際支援や農業を持続できる仕組みづくり。ヤギやニワトリ、ネコなど動物との暮らし。やりたかったことを、ここ鶴岡で少しずつ実現している。

庄内柿や玄米など庄内の伝統食材で製造したSHONAI SPECIAL(ショウナイスペシャル)のカキ エナジーバー。マラソン大会への提供などのプロモーション活動もあって、販路はじわじわ拡大中。4種の味があり1個350円(税込み)

アフリカ・ブルキナファソで。国際支援という夢はずっと持ちつつも、いったん置いておいて、今はここ(鶴岡)に住みたいから、ここでしかできないことをしたいんです

庄内柿で何か新しいことを、と始めた柿の葉茶。「柿守人」のチームでわいわい作業するのは楽しかったけど、ビジネスとしては…?という壁にぶつかりました