やまがた未来プロジェクト2020

MENU

2020.05.20

コラム特集

創刊記念スペシャルコラム 作家・演出家 後藤ひろひと氏(山形市出身)

君の抱く夢。
それが大きくなればなるほど、世界は小さくなる。

作家・演出家 後藤 ひろひと

 「まだ大阪に住んでるんですか?」。東京の知り合いや東京で出会う人たちからそう聞かれることはとても多い。まるで遅かれ早かれ私は絶対に東京に住まなければいけないかのような質問だ。残念ながら私の人生設計には”東京に住む”などというプランはまったくない。

 山形に生まれて山形で育った私は現在、大阪で吉本興業に所属して作家業を営んでいる。吉本興業に所属しているからといって新喜劇や漫才の脚本を書くわけではない。主に演劇の脚本を書く劇作家という仕事を吉本興業にマネージメントしてもらっているという形だ。

 何年か前の沖縄国際映画祭でガレッジセールのゴリ君から「え?後藤さんまだ大阪に住んでるんですか?」と尋ねられたことがある。いつもはその面倒な質問に対して「東京で稼いで大阪で納税するのが俺のスタイルだから」とうそぶいて回避するのだが、ゴリ君の目があまりにも真剣だったので私は本心を答えてみることにした。「ゴリ君、ちょっと考えてごらん。映画の都ハリウッド。ショーの本場ラス・ベガス。演劇の聖地タイムズスクエアやウエストエンド。そこからの距離は東京も大阪も変わらないだろ?」。その時のじっと私を見つめるゴリ君の目が忘れられない。「俺の生まれた山形。君が生まれたここ沖縄。目指すものが大きければ大きいほど人間はどこに住んでたって構わないんだよ」。ゴリ君は驚いた顔でしばらく黙り、やがてテレビでよく見せる満面の笑顔に変わっていった。「かーっこいいっすねー!」

 確かになかなかかっこいいことをいってしまったが、先の述べた通り、それが私の本心である。

 その昔は「東京に行って一旗揚げる」という言葉が慣用句になっていたが、現在ではインターネットの発達により個人がSNSや動画配信で自分の能力を発揮できる時代になった。そこで高い能力を披露すれば、東京を一瞬で飛び越えて世界から正当な評価を受けるすてきな世の中に我々はいる。

 君の抱く夢。それが大きくなればなるほど世界は小さくなる。世界を小さいと思えた時、君はどこに暮らしていようとも最高の人生を過ごしているのだろう。

後藤ひろひと (作家・演出家

1969年山形市生まれ。山形東高-大阪外国語大学(現在の大阪大学)中退。87年遊気舎に入団。89~96年の退団まで2代目座長として活躍。98年に川下大洋と「Piper」を結成。Piperでの劇作活動以外でも、パルコプロデュースやG2プロデュースなど数多くの舞台で脚本や演出を手掛け、映画「パコと魔法の絵本」の原作者としても注目を集める。4カ国語を操る怪優としても有名。通称〝大王〟。

TOPへ